プチ・ポワンの刺繍がガラスの中に入ったトレイ・ドレッシングセット（身だしなみを整えるという意味でグルーミングセットとも呼ばれます）とグローブボックス、その右には300枚のポストカードが入るカルトアルバムです。中には当時の流行（日本で言うとモガスタイル）で、まだそんなに普及もしていないカメラで撮ったモノクロ写真の女性や、赤ちゃんの誕生に送るイラスト入りのカードなどが入っています。グローブボックスはただの手袋入れ？と侮ることなかれ。内側はベルベット貼りで、金具も凝っており、昔々「どこぞのなにがし」嬢/夫人が、高価な手袋をしまっていた箱ではなかったのでしょうか。階級制度が厳しかったヴィクトリアン時代のイギリスでは、グローブ（手袋）というのは自分の身分を外に示す大事なアイテムでした。女性が家の中でお茶を飲むときでさえレース、サテンやシルクの手袋をつけているいうことは、家事を一切家事使用人に任せて、自分は働かなくてもいいという社会的な地位と経済状況を表すことでもありました。それらの女性は、結婚前は父親、結婚後は夫の庇護の下、社交の季節になるとロンドンで、シーズンオフにはカントリーにある大豪邸でカード遊びやパーティ三昧の毎日を過ごしていました。