フランスのホーローメーカーの巨人は、なんと言ってもJapy社とBB社、そしてこのエトワール社でしょう。手描きのデイジーがとても可愛らしい、お気に入りのキャニスターです。底にはEtoile・PENのマーク。エトワールとはフランス語で「星」の意味です。BB社は、フランス人の兄弟がオーストリアに渡って創設したホーローのメーカーで、どちらかと言えば花や幾何学的なデザインのホーローを得意としています。Japyはバラやパンジー、パンジーとスズランなど、装飾的な花柄で有名ですね。対するエトワールは、厚いエナメルに手描きの盛り上がった花柄が多いのですが、写真のような、盛り上がってはいないけれど、丁寧な手描きの繊細な花柄も多く世に送り出しています。1910年〜1930年のフランスは、自国でもすぐれたホーローを作り出していましたが、ベルギーからの輸入も多くありました。それらのメーカーの統合されたものが「Societe nouvelle des Produits Emailles」、つまりPENだったのです。 そういう事情もあり、このメーカーは当時459人の男性従業員、319人の職人、116人の女性従業員、そして24人の管理職を抱えていた、一大メーカーでした。しかしそのPEN社も、1956年にその歴史を閉じました。今そのいい仕事が垣間見られるのは、コレクターとして幸せなことです。イギリスの故ダイアナ元皇太子妃が晩餐会に招待された時、愛らしい陶器に、ついついお皿をひっくり返してメーカー名を見ました。それを使用人か他の招待客が見咎め、失笑をかったというエピソードがあります。ダイアナさんのような王族は、そんなことははしたないという堅苦しいマナーに縛り付けられていますが、幸いなことに、私達庶民は自由にメーカーを確認できる特権を与えられています。底なんて普通は見ないわよ、というあなた、ホーローを手にしたら、一度ひっくり返して底のメーカー名を確認してみては。。。。。？