カントリーアンティークに興味を持ってしばらくして、イギリスの陶器デザイナーであるスージー・クーパーを知りました。その前は、いわゆるボーンチャイナの、地肌が白くて、完璧なフォルムを持ち、指ではじくと乾いた音がする、ウェッジウッドやミントンなどの陶器が好きだったので、細かいカンニュウがあり、薄い陶器のスージーの器はなんとなく「安っぽい」気がしていました。何でも流行には「右にならえ」式のスージー人気もなんだかイヤでした。ところがところが、その柄の豊富さ、人をほっこりさせる可愛らしさ、子供の頃に両親が使っていたカップを思い出させるレトロな形、彼女の生きた時代や生きかたなどを知るうちに、不思議なほどどんどん惹かれていきました。イギリスのヴィクトリア女王が亡くなった翌年の1902年に生まれて1995年に永眠、ついこの前まで現代に生きていたスージー。女性に参政権が与えられてもなお女性を軽視する時代にあって、自社を設立して世間をあっと驚かせました。二度の戦争、世界的な大恐慌など激動の世紀を生きながらその頃では遅い36歳で結婚をし、41歳で出産、仕事をしながら家庭を守ったイギリスの「肝っ玉キャリアウーマン」でした。可愛らしい花柄が代名詞ともなっているスージー･クーパーですが、意外にも原色や地味な中間色で直線を描いた、アール・デコ調のものも多く残っています。時代の荒波にも影響を受けつつもそれに翻弄されることなく、「自分の感性と信念」という羅針盤を持って進んで行った彼女の生きかたは、現代女性も大いに共感するところがあるのではないでしょうか。